教育困難校

私は、元高校教員。

大学を出て、最初に勤めたのは、

〇〇県内でも有数の「教育困難校」。

 

マンガ「ドラゴン桜」では、

荒れた「竜山高校」の様子が目をひくが、

あれをもうちょっと悪くした?!感じだった。

 

とにかく、授業なんて成立しない。

私は、高3の公民科の授業を担当していたが、

授業を聴いてくれる生徒はいなかった。

 

本当にだれも聞いてくれないのだ・・

 

それでも、私は懸命に勉強の話をし、板書した。

 

その様子を見かねたある男子生徒が

後ろの方の席から手招きで、私を呼んだことがあった。

 

何かと思って近づくと、彼はこんなことを話し始めた。

 

彼「先生さぁ、ここを学校だと思っているでしょ?」

私「あぁ、もちろん、思っているよ」

彼「ちぃっ、ちぃっ」(人差し指を顔の前で左右に振る)

 「違うんだなぁ」

 「ここはさぁ、収容所なんだよ。

  ほら、俺たちみたいな悪がね。昼間っから市内に出回ると

  カツアゲだの万引きだのって

  一般の人たちにいろいろ迷惑がかかるでしょ」

 「だからね。昼間の間だけでもおとなしくしてくれって

  一時的にここに収容されてるわけ」

私「はぁ?」

彼「だからね、どうせだれも聞いてないんだから、

  先生も、あんまりむきにならず、気楽にやった方がいいよ」

 

という訳で、私は彼に諭された。

今になって振り返ると、なかなか鋭い意見だ。

うーむ、と唸らせる説得力がある(これは実話)。

 

私は、今なお、学校というものの必要性を疑い、

授業による教育の効果を疑っている訳だが、

その原点は、初任校の経験によるところが大きい。

 

私は、1年でその学校を辞めることになったが、

そのとき、ある女子高生が、授業の感想文で書いてくれた

ことも忘れられない。

それは、確か、こんな内容だった。

 

「先生は、私が今まで出会ってきた先生と違った。

 いいかげんじゃなかった。

 だけど、もっと私たちに心を開いてほしかった・・」

 

これを読んだとき、正直、グサッときた。

 

私は、彼らに心を開いていなかったのか・・

 

「オープンマインド」でいること。 

生徒たちと、本音で向き合うこと。

 

そのとき以来、教員として、

私が常に心掛けているのは、それだ。

 

さて今、私は大学の教員だが、

「学生から学ぶ」姿勢を常に持ち続けたい、と思う。

 

あえていうと、それが、

私が教員でいることの、もしかすると唯一の

原動力かもしれない。